Hommage a TOKIO KUMAGAI

パリをデザインの拠点とし、東京コレクションで発表を続けたファッションデザイナーの軌跡をたどります

島本美知子氏の語る登喜夫さん その2

 島本さんが、さらにパリでの登喜夫さんについてお話しくださいました。
<個別の質問>
Qa. 島本さんは登喜夫さんのすべてのブランドロゴ(セリフの美しいロマン書体のロゴ、手描き風の"homme"、少し平べったいゴシック書体のHOMME DE NUIT)をお手がけになったのですか?差し支えなければロゴができるまでのプロセスをお話しいただけますか?ロゴデザインの他にも登喜夫さんとお仕事をされたことはありますか?
おそらく自分の名前でブランドを発表する時に新たなロゴが必要になったのだと思いますが、突然打診を受けました。私がデザインしたのは"TOKIO KUMAGAÏ"のみで、hommeなどは登喜夫さん自身の描いたものをロゴにおこしたのではないでしょうか。既に明確なイメージを登喜夫さんが持っていたので、スムーズに仕事は進みました。登喜夫さんと仕事のつきあいはこのロゴ制作一度きりです。
Qb. 登喜夫さん/トキオクマガイの靴の絵を描いたときのようすをお話しいただけますか?
靴の絵は全部で3点描きました。私は仕事を離れた登喜夫さんと会うことがほとんどで、靴を借りに登喜夫さんのところに行った時の、仕事中の彼の様子はまるで別人のように無口で一心に何かを考えていて、デザイナの仕事の大変さを感じました。
仮面モチーフの靴の絵は半立体作品で、渡辺サブロオさん(メーキャップアーチストでwAtOSAプロデューサ)に長くお貸ししていました。
私が描き登喜夫さんにプレゼントしたポートレートは、ずっと彼のアパートの暖炉の上に飾ってあって、日本のお葬式では遺影代わりになりました。
Qc. 島本さんが一番思い入れのあるTOKIO KUMAGAÏ東京コレクションはおありですか?
□ ’85-‘86秋冬 □ ‘86春夏 □ ’86-‘87秋冬 □ ’87春夏 □ ’87-‘88秋冬 □ ’88春夏
残念ながらコレクションは見たことがありません。
Qd. 島本さんはパリでの登喜夫さんのミサに出席されたそうですが、その時の様子をお話しいただけますか?
いろんな人が出席していました。デザイナをはじめモードの関係者はもちろん、彼のアパートの管理人や掃除のおばさんまでが教会に足を運んでくれていて、登喜夫さんの分け隔ての無い交際がよく現れていたと思います。
Qe. 他にお話しいただけることがあればお願いいたします。
トキオクマガイのバルーンシルエットの吊りスカートのセットアップを着てニューヨークの街を歩いていると、傍に近づいてきた女性に「その服素敵ね!50m向こうからでも気になっていたの」と声をかけられたことがあります。
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 日本とパリを行き来する生活を続けていらっしゃる島本さんがご自身の経験や生活を紹介するブログをお始めになりました。在パリ日本人の大先輩でいらっしゃる島本さんの貴重なお話が今後配信予定と聞きましたので私も拝読しながら色々と勉強させていただこうと思います。
http://ameblo.jp/michiko-shimamoto2/
 お話しくださった、登喜夫さんのポートレートは島本さんのお気に入りでもあり、東京で開いた個展の案内状にもなりました。ご好意でカードを頂戴し島本さんのご了承を得ましたので紹介させていただきます。拙ブログのトップで使用させていただいているポートレートは亡くなる間際に撮影されたものだそうで、「顔はもう少しぽっちゃりした感じだった」というのが島本さんの絵からよく伝わってきます。

 お忙しい中ご回答くださいました島本美知子さんにはこの場をお借りしてお礼申し上げます。