Hommage a TOKIO KUMAGAI

パリをデザインの拠点とし、東京コレクションで発表を続けたファッションデザイナーの軌跡をたどります

FOOT PRINT (MOMU, Antwerpen) exhibition catalogue

表紙はマルタンマルジェラのタビブーツの靴底模様


2015年秋から翌年初めにかけて、ベルギー・アントウェルペンのモード美術館MOMU -MOde MUseum- にて FOOT PRINT と冠した靴に関する企画展が開催されました。この展示の発起人でもあり、アントウェルペンで1983年から靴のセレクトショップ Coccodrillo を営んでいたのが、Eddy Michiel氏とGeert Bruloot氏のお二人です。
実はこのお二人、現在世界中で当たり前になっている衣料品の販売業態の一つ、「セレクトショップ」-様々なブランドの商品をバイヤーの趣味嗜好に沿って買い付け、一つのお店で販売する- の始祖となる革新的な店 LOUISの創業者でもあるのです(セレクトショップの創業は全世界で同時多発的に起こったと考えられますが、LOUISは始祖の一つというのが私見です)。LOUIS はオーナーの座を譲り、Coccodrilloは惜しまれながら2019年に幕を閉じましたが、私は幸運にも2015年春に二人と会ってお話を伺うことができました。

FOOT PRINT は Coccodrilloの創業30周年記念の書籍出版というプロジェクトから始まり、最終的にMOMUでの展示へと昇華していったそうですが、そのはず、書籍は単に企画展のカタログというにはあまりにも豪華な製本になっていて素晴らしい出来栄えです。
今回、Eddyさんのご好意により、カタログのトキオクマガイ紹介ページの一部と、店舗ファサードの写真、そしてEddyさんのインスタグラムの、買い付け時に撮影されたポラロイドのポストを掲載させていただきます。
拙ブログ2014-02-24のポストにてご紹介した、トキオクマガイの靴の製造を長年手がけられたHeresco社のオーナー、アメリオ・ザガト氏がMMMメゾンマルタンマルジェラのタビブーツを造るきっかけは、Coccodrilloのお二人だったことが伺えます。
アントワープの6人」を筆頭に1980年代以降のアントウェルペンでデザイナーを目指す若い世代に、日本人デザイナーのクリエイションが与えた影響は大きいと言われますが、その中にCoccodrilloを通じて登喜夫さんのクリエイションも存在していただろうかと思うと、ワクワクします!

Coccodrilloのファサード。1988年以降(登喜夫さん没後)と思われます


FOOT PRINT the tracks of shoes in fashion (LANNOO)

Geert Bruloot / Hettie Judah / Dodi Espinosa 

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TOKIO KUMAGAÏ
In our second season as a shoe store, we discovered a window on the Place des Victoires in Paris filled with the most exciting and fashionable shoes we could find at the moment : the shop window of Tokio Kumagaï. At our request, we were granted a visit to the Kumagaï show room, where we were welcomed by the wonderful Mr [Amelio] Zagato and by the master himself.
 A brief chat about the (Koji Tatsuno-designed -namourOK注:ロンドンで活動されたのち、パリでet vousブランドのディレクターとして活躍-) Culture Shock clothes we were wearing created an immediate friendship between four of us, which proved later to be the foundation of our first commercial success as a store. Tokio Kumagaï’s name definitely helped us achieve our goal of becoming a designer shoe store. Mr. Zagato, whose company Heresco produced the Kumagaï shoes in Italy, became an enduring friend ; so, after the passing of Tokio, Eddy was able to convince him to have a look at the first Martin Margiela tabi boots. He began to work with Martin and became the producer of these iconic shoes for many years.
Geert Brulot and Eddy Michiels



登喜夫さんのポートレート上田義彦氏の撮影

(以下の訳は namourOKによる)

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トキオクマガイ
靴の店を始めて2シーズン目、パリのヴィクトワール広場にとてもエキサイティングでファッショナブルな靴が並ぶウィンドウの店:トキオクマガイを発見した。お願いして、ショールームを訪問すると、アメリオ・ザガト氏と、デザイナー本人に手厚く歓迎された。
僕たちが着ていたカルチャーショック(コージ・タツノのデザイン)の服について少し話しただけで、私たち4人の間には友情が芽生え、それは後の僕たちの店における初めての商業的な成功となったことが証明している。トキオクマガイのネームバリューは、Coccodrilloがシューズデザイナーのセレクトショップとなる最終目標を達成する大いな手助けとなった。イタリアでトキオクマガイの靴を製造していたHeresco社の社長ザガト氏とは長きにわたる親友となった。登喜夫が亡くなってから、エディがザガト氏を説得して、マルタンマルジェラの最初のタビブーツを見てもらった。それ以降、ザガト氏はマルタンと数年間、ブランドのアイコンともなったタビブーツの製造を手がけてくれたのだった。
ヘールト・ブルルート/エディ・ミケールズ

Eddyさんのインスタより。ポラロイドは当時のバイヤーの必需品だったようです